お待たせ致しました、EVC5 連載シリーズ第2話です!
今回は、初期セッティングから走りこんで判った事をもとに、より本格的なセッティングである
「 マップ補正によるセッティング方法 」 を解説致しますね〜
ではまず、走り込んで判った事を列挙しておきます。
【 AVC−Rとの特性の違い 】
おそらくお互い単体で使っている分には判りにくい部分とでも言いますか、使い比べた結果として
感じるのは、
・ AVC−R は EVC5 と比べると制御が少々荒いと思います。
しかし、この荒さがブーストに迫力を与えているので、ダイナミックな速さがありますね。
荒さは自己学習機能によって学習度合いが進むと徐々に無くなって行きます。
また、デューティー値を手動補正する事によって荒さを手なづける事も可能。
セッティングの要はこの荒さを手なづけ、ダイナミックさと安全性のバランスを得る事です。
・ EVC5 は逆に制御が正確なので、荒さが無い分、ブーストに少々迫力不足の感じが否めません。
ただし、これはあくまでも目標ブースト値を入れただけの単純な初期セッティングの場合であり、
EVC5 の真髄であるマップ補正セッティングを行う前の話。
マップ補正を行いタービンの威力を如何に引き出すかがセッティングの要になるでしょう。
セッティングは正確な制御の安全性の中に、迫力感を加えていく作業になると思います。
つまり、セッティングの方向性が逆で、EVC5 では 「 マップ補正によって、どう味付けするか 」 が
速さを得るキーポイントになりそうですね〜
【 ご注意 】
もちろんノーマル状態からなら EVC5 をポン付けして簡単な初期設定だけでも充分に速くなるでしょう。
ここではあくまでも 「 社外同士のブーストコントローラー交換 」 を基準にしたお話です。
既にノーマル状態よりも数段パワーが出ていて充分に速い状態同士の比較である事をご理解下さい。
くれぐれもお間違えのないよう、お願いしますね (^^ゞ
【 マップ補正とは… 】
マップ補正とは、制御を行う時に一定の条件下でどのように制御するか、制御軸を作って補正する
仕組みの事をいいます。
EVC5 での制御軸は大きく分けると 1 種類のデータをもとにした1次元マップと、2 種類のデータで
縦横 2 次元のマップを作って補正を行っていく 2 通りの方法があります。
EVC5 の1次元マップは、スロットル開度によるものと、エンジン回転数 ( または車速 ) による2通り
が選択可能です。
※ エンジン回転数か車速かは、本体取付の配線時に選択する。
セッティング時には配線方法に従った選択のみ有効。
さらにこの 1 次元同士を掛け合わせた合計 3 種類のマップがあり、実際の制御ではこの 3 つの
中から 1 つを選んで行う事になります。
3 種類のマップとは以下の通りです。
・ スロットル開度によるマップ
・ エンジン回転数によるマップ ( または車速によるマップ )
・ スロットル開度とエンジン回転数によるマップ ( またはスロットル開度と車速によるマップ )
※ 総数は 5 種類ですが、実際のセッティング時に選択可能なのは 3 種類となります。
また、設定は 「 Aモード 」 と 「 Bモード 」 の 2 つがあるので、それぞれ 3 種類の中から
1 つを選んで合計 2 パターンをセッティングデータとして保持出来ます。
例えば、エンジン回転による1次元マップでは以下のようになります。
回転数 |
2000rpm |
3000rpm |
4000rpm |
5000rpm |
6000rpm |
基本ブースト
120kPa |
+15kPa Up |
+15kPa Up |
+10kPa Up |
0kPa |
-5kPa Down |
エンジン回転数に応じて、補正する量を決めて制御していく仕組みですね。
ようは回転数が変わるとブースト設定値も変わるセッティング。
上の例は、基本となるブースト値を 120kPa にセットし、各回転数に応じて増減させています。
低回転域の 3000rpm ではブーストを多めにしても比較的安全なので +15kPa 加えて 135kPa まで、
中回転域の 5000rpm では増減無しで基本ブースト値の 120kPa、そして高回転域ではブーストの
かけすぎは危険ですから安全マージンを確保するために -5kPa 落としてブーストを 115kPa にする
セッティング例です。
※ AVC−R の場合は、基本的にこの 1 次元マップ方式ですね。
また、スロットル開度とエンジン回転による2次元マップでは、以下の表のような感じです。
|
回転数 |
2000rpm |
3000rpm |
4000rpm |
5000rpm |
6000rpm |
スロットル 0% |
+20kPa Up |
+18kPa Up |
+15kPa Up |
+8kPa Up |
-1kPa Down |
スロットル 25% |
+18kPa Up |
+17kPa Up |
+14kPa Up |
+6kPa Up |
-2kPa Down |
スロットル 50% |
+17kPa Up |
+16kPa Up |
+13kPa Up |
+3kPa Up |
-3kPa Down |
スロットル 75% |
+16kPa Up |
+16kPa Up |
+11kPa Up |
0kPa |
-4kPa Down |
スロットル 100% |
+15kPa Up |
+15kPa Up |
+10kPa Up |
0kPa |
-5kPa Down |
先ほどの例は回転数の横軸だけでしたが、これにスロットル開度の縦軸が加わっています。
これによりスロットル開度と回転数の状況に合わせてブースト圧のコントロールが可能になります。
このように、基本となる目標ブースト値に対して、どのような状況下でどのように増減をするか
1 次元または 2 次元の制御軸を設定してコントロールする方法が 「 マップ補正 」 です。
いかがでしょうか?
マップによる補正を行うだけで、より実戦的で実用レベルの高いブーストが得られるワケです。
マップ補正機能の有無で、ブーストのかかり具合に雲泥の差が出て来るのは言うまでもありません。
【 マップ補正の下準備 】
マップ補正を行うには、まず、制御軸の目盛 ( マップの分岐点 ) を決めてやります。
▼ エンジン回転軸の設定
エンジン回転数の制御軸は、初期設定値で
2000rpm、3000rpm、4000rpm、5000rpm、6000rpm
に設定されています。 私の GDB の場合は高回転側寄りのパワー特性なので、
3000rpm、4000rpm、5000rpm、6000rpm、7000rpm
に設定しました。
ちなみに制御範囲は、
始点の 3000rpm は、 0 〜 3000rpm
中間の 4000rpm は、 3001 〜 4000rpm
5000rpm は、 4001 〜 5000rpm
6000rpm は、 5001 〜 6000rpm
終点の 7000rpm は、 6001rpm 〜 最大回転数まで
になります。
▼ スロットル開度軸の設定
スロットル開度の制御軸の初期設定は
0% 、25% 、50% 、75% 、100%
になっています。これは実際には
0% 、25% ( 1〜25% ) 、50% ( 26〜50% ) 、75% ( 51〜75% ) 、100% ( 76〜100% )
であり、実質 4 等分になってしまっているので
20% ( 0〜20% ) 、40% ( 21〜40% ) 、60% ( 41〜60% ) 、80% ( 61〜80% ) 、100% ( 81〜100% )
に変更し、均一に 5 等分でキメ細かく制御したほうが良いでしょう。
【 実際のマップ補正値 】
基本の目標ブースト値を 「 125kPa 」 に設定。
|
回転数 |
3000rpm |
4000rpm |
5000rpm |
6000rpm |
7000rpm |
スロットル 20% |
+20kPa Up
目標145kPa |
+15kPa Up
目標140kPa |
+10kPa Up
目標135kPa |
+5kPa Up
目標130kPa |
0kPa
目標125kPa |
スロットル 40% |
+20kPa Up
目標145kPa |
+15kPa Up
目標140kPa |
+10kPa Up
目標135kPa |
+5kPa Up
目標130kPa |
0kPa
目標125kPa |
スロットル 60% |
+20kPa Up
目標145kPa |
+15kPa Up
目標140kPa |
+10kPa Up
目標135kPa |
+5kPa Up
目標130kPa |
0kPa
目標125kPa |
スロットル 80% |
+20kPa Up
目標145kPa |
+15kPa Up
目標140kPa |
+10kPa Up
目標135kPa |
+5kPa Up
目標130kPa |
0kPa
目標125kPa |
スロットル 100% |
+20kPa Up
目標145kPa |
+15kPa Up
目標140kPa |
+10kPa Up
目標135kPa |
+5kPa Up
目標130kPa |
0kPa
目標125kPa |
低回転域では 145kPa 〜 140kPa に設定し、疑似的な初期オーバーシュートを起こさせて
下からパンチのあるブースト特性を狙っています。
とりあえず今回は 「 マップ補正の様子見 」 もあるので、いきなり全ての値をいじらずに
エンジン回転軸をメインにして、スロットル開度軸は固定状態にしてみました。
なお、高回転域は補正値が 「 0kPa 」 なので、目標はそのままの 125kPa になりますが
実際は高回転域でのブースト圧のタレなどを計算に入れると、このぐらいの設定値で
実質 110kPa 〜 120kPa ぐらいになると予想してのセッティングです。
ちなみに基本のオフセットは 「 120% 」 で、オフセット補正マップは使用していません。
ワーニングブースト設定は 「 150kPa 」 、ドロップブーストは 「 20kPa 」 にセットしました。
【 ここまでのインプレッション 】
やはりある程度セッティングしてやると、かなりイイ感じになって来ますね〜
ブーストが下からグイッと出て来て、ドーンと高回転まで一気に突き抜けるパワー感!!
これですよ、これ! これこそ我が愛機!
初期セッティングでは低〜高回転域まで全て 120kPa に固定した設定でしたから、
パワーもトルクも 1ランクダウンで、真のパワーを封印されていたようなもの。
実際、ブースト圧設定の最大値を 120kPa にしても、それ以上の 140kPa ぐらいに設定したとしても
タービンや吸排気の能力以上にブーストはかからないから、高回転域ではタレが生じて来るので
結果的には 110kPa 〜 120kPa 程度でどちらも同じになります。
しかし、そこに至るまでの低回転域と中回転域で、どれだけパワーに勢いと弾みをつけれるかで、
最終的に得られるパワーは大きな差になって来るのです。
統計的にお話をすると、過去に行って来たパワー計測では、全域を 120kPa に固定した場合の
パワーは 320 〜 330PS ぐらいが平均値ですが、低中回転域でブーストを 140kPa かけてやると
高回転域で 120kPa 程度にブーストが落ちても、パワーの平均値は 350 〜 360PS になります。
つまり、補正マップを使用する事によって、高回転域では同じ 120kPa 程度だったとしても
下からの勢いで弾みがつき、パワーが乗って来るワケです。
これがマップ補正可能なブーストコントローラーの優位性であり、取りわけ制御の正確な EVC5 は
より安全にパワーを引き出す事が出来るので良いですね。
ちなみに補正マップ機能の無いブーストコントローラーでも、最大値を 140kPa 以上に設定すれば
同様に低〜中回転域で勢いをつける事が可能だと思いますが、路面や環境の影響等によっては
高回転域でもブーストのタレが起きない場合があり、大変危険です。
上のマップのように、中回転域で徐々に下げはじめ、高回転域でキッチリ落とす設定になってないと
例えば上り坂など、通常時よりブーストがかかり易い状況下では、ブーストがかかり過ぎてしまって
エンジンブローを起こす可能性が非常に高まります。 くれぐれもご注意を。(^^;; ヒヤアセ
さて、今回は回転数別のブースト圧設定のみで、スロットル開度によるセッティングは固定したままの
状態でしたが、まずまずの結果が得られたと思います。
次回は 「 EVC Easy Writer 」 を使って、もっと積極的なセッティングに挑戦したいと思います。
お楽しみに〜 (^-^)ノ
次回へ続く。。。
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